今回はシネマ歌舞伎で上映される坂東玉三郎さん・中村勘三郎さんが演じる「鰮売恋曳網(さんまうりこいのひきあみ)をご紹介いたします!今回公開される作品は、2009年のさよなら歌舞伎座公演で上演された舞台を撮影したもの。
中村勘三郎さんのおちゃめでユーモラスな演技と玉三郎さんの気品ある美しい演技、そして、あの三島由紀夫さんが書き下ろしたという台本は、とてもあたたかく、楽しいハッピーエンドを迎えます。
ストーリーもわかりやすく、古典歌舞伎とはまた異なり、近代演劇に近い感覚で楽しめますので、歌舞伎初心者の方にはとてもオススメできる作品です。なによりも、見終わった後のなんとも幸せな感じがとってもいいのです!
歌舞伎好きの皆さんにはもちろんオススメですが、それに加えて
・歌舞伎に興味があるけれどもハードルが高い
・気楽に歌舞伎を楽しんでみたい
・着物でお出かけする場所を見つけたい
そんな方にも気軽に映画館で歌舞伎の世界が味わえる「シネマ歌舞伎」。
楽しみに出かけてみませんか♪
〇今回の内容〇
1.「鰮売恋曳網(いわしうりこいのひきあみ)」のあらすじ
2.「鰮売恋曳網(いわしうりこいのひきあみ)」の見どころ
3.最後に。シネマ歌舞伎上映情報
1.「鰮売恋曳網(いわしうりこいのひきあみ)」のあらすじ
京の都、五条橋の前で博労(ばくろう:うしやうまの仲介商人)の六左衛門(ろくざえもん)に遁世者(とんせいしゃ:出家して仏門に入った人、世捨て人)の海老名なあみだぶつが、なむあみだぶつの息子である鰯賣(いわしうり)の猿源氏(さるげんじ)の近況について話をしています。するとそこへ、腑抜けた売り声をあげながら、猿源氏がやってきます。自慢の売り声にも全く元気がない猿源氏を、なむあみだぶつは叱りますが、それには理由がありました。
実は、この五條橋で見かけた、傾城(けいせい:美女、遊女)蛍火に一目惚れ。恋の病にかかってしまい、心もそぞろで自慢の売り声にも力が入らないというのです。そこで猿源氏の父・海老名なあみだぶつは、息子の恋を成就させようと猿源氏を大名の一行に仕立てて蛍火のいる揚屋へ向かうことを提案し、向かわせます。
遊女たちから「勇敢な軍物語を聴きたい」とせがまれ、困る猿源氏でしたが、鯛や平目など魚たちの珍妙な軍物語を語り聞かせ、窮地を脱します。しかし、恋焦がれる蛍火を目の前に、夢見心地で盃を交わす猿源氏は、いつしか酔いつぶれて蛍火の膝の上で寝入ってしまうことに・・・。そして、寝言で「伊勢の国に阿漕ヶ浦の猿源氏が鰯買うえい」と自慢の売り声を上げてしまうのでした。それを聞いた蛍火は猿源氏の正体を問い詰め、その素性を問いただされますが、鰮売りであることを否定します。すると、今度は蛍火が突然泣き出して・・・。
さて、この恋の行方はどうなることやら・・・。
最高にハッピーなお江戸のラブストーリーです。
2.「鰮売恋曳網(いわしうりこいのひきあみ)」の見どころ
・猿源氏、中村勘三郎の愛嬌たっぷりな演技
2012年に亡くなった18代目中村勘三郎さん。スクリーンで見るその演技は、猿源氏のキャラクターを本当に愛らしく、思わずクスクス笑ってしまうような見事なチャーミングさで演じされています。本当にお茶目で、その仕草、表情に引き込まれてしまうのです。
・玉三郎さんの蛍火
平成元年の第一回勘九郎の会から蛍火を演じられている玉三郎さん。18代中村勘三郎さんがまだ勘九郎さんであったころから、お二人でタッグを組みながら演じられ、このシネマ歌舞伎として残る2009年のさよなら歌舞伎座公演の上演が最後となりました。それ以降は、中村屋を中心に上演されています。
いわずと知れた、玉三郎さん演じる蛍火の美しさですが、猿源氏のキャラクターとともに、なんとなく、愛らしさも感じられる、ステキな蛍火です。
・三島由紀夫のハッピーな脚本
三島由紀夫が御伽草子を題材に書き下ろした作品。三島由紀夫は歌舞伎の脚本をいくつか書き残していますが、その中でも代表作のひとつとして知られている作品です。
猿源氏が披露する魚の軍紀物語を披露するところや、猿源氏が蛍火にする寝言が古歌に因むものだというのに、和泉式部と藤原保昌の故事を「こじつける」ところなどは三島脚本の本領が発揮されているといわれています。
あまり知識がなくて恐縮ですが、三島由紀夫というと悲劇の(勝手な)イメージがあったのですが、こんなにもハッピーなラブストーリーも書かれていたということで、イメージが色々と変わった機会となりました。
3.最後に。シネマ歌舞伎上映情報
途中途中、素直にクスクス笑えちゃう、そして、見終わったあと、なんとなくほっこりとした温かさに包まれる・・・そんな歌舞伎の演目です。
初心者の方にはとてもオススメだと思います。
現在、全国各地で上映中。
ぜひ、映画館に着物姿で足を運んでみませんか♪
・シネマ歌舞伎とは
シネマ歌舞伎は、歌舞伎や映像制作を行ってきた松竹が、歌舞伎の舞台公演をHDカメラで撮影し、全国の映画館で月に1回上映しているものです。
生の歌舞伎公演を観ているかのような臨場感もある一方で、シネマならではの俳優の表情のアップや衣装の細やかな刺繍などのアップなどもあり、単に舞台をそのまま流しているものではなく、松竹ならではの編集と見せ方で構成されているので、また新しい歌舞伎の楽しみ方ができると思います。
〇上映劇場
全国各地の映画館で上映されています。
実際に劇場まで足を運ぶのは難しいという方にはオススメです。
〇上映期間
ひと月に1回、1週間程度上映されます。
(上映期間・内容は映画館等により変更となります)
〇チケット購入
通常の映画のチケットと同じく、窓口もしくはネットにて購入することが可能です。
公開期間が短く、1日の上映時間も限られていることが多いので、最寄りの映画館の上映情報をきちんと事前にチェックすることがオススメです。
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